研究室の主な研究テーマ

地球温暖化、砂漠化、海洋酸性化、鉱物資源の枯渇など21世紀の人類が直面している重要課題を解決するため、尾嶋研究室では「グリーンナノテク」の一環として、1)省エネルギー型新型素子、2)燃料電池用電極触媒、3)Liイオン電池など蓄電材料、をターゲットにして研究を進めています。

【1】省エネルギー型新型素子の開発

(1)LaserMBEで作製した遷移金属酸化物薄膜のin-situ放射光光電子光解析
In situ high-resolution photoemission spectroscopy of transition metal oxide films grown by a laser molecular-beam epitaxy system

ペロブスカイトMn酸化物は、超巨大磁気抵抗効果、half-metallic伝導、金属-絶縁体転移等、電荷・スピン・軌道の自由度が密接に絡み合った様々な興味深い物性を示します。これまで、その電子状態を解明しようと多くの研究が行われてきましたが、バンド構造を実験的に決定できる角度分解光電子分光の研究成功例は未だ報告がありません。その理由として、3次元物質であるペロブスカイトMn酸化物においては角度分解測定に必要不可欠な単結晶表面が従来の劈開等の手段では得られないことが挙げられます。そこで我々は、最近開発に成功した「LaserMBE-光電子分光複合装置」を用いて、原子レベルで平坦な表面を持つペロブスカイトMn酸化物単結晶薄膜を作製し、in-situで角度分解光電子分光を行うことにより、世界に先駆けてペロブスカイトMn酸化物のバンド構造の実験的決定に成功しました。さらに現在、ホールドープ濃度を変えたMn酸化物薄膜の系統的な測定を進めています。:2008年度日本表面科学会学会賞、2008年度物理学会若手奨励賞、2008年度独創を拓く先端技術大賞優秀賞、2007年度日本放射光学会奨励賞、2007年度第20回放射光学会年会合同シンポジウム学生会員発表賞、2006年LEEM/PEEM-V国際会議Student Award、2006年度応用化学専攻修士論文優秀賞、2006年度第19回放射光学会年会合同シンポジウム学生会員発表賞、2005年PF研究会ベストポスター賞、2005年放射光学会学生発表賞、2004年物理学会注目論文賞、2004年表面科学会スチ・・[デント奨励賞、2003年PF研究会ベストポスター賞、2003年第2回東大総長賞、2003年石井学術奨励賞,2001年日本応用磁気学会学術奨励賞、2001年日本応用磁気学会優秀講演賞




(2)抵抗変化型酸化物薄膜不揮発メモリーの開発
Development of non-volatile resistance random access memory using oxide thin films

次世代不揮発メモリーとして大きな注目を集めているReRAMについて、当研究室が得意とするPLD結晶成長法を用いて酸化物基板上に電極薄膜と酸化物半導体薄膜をエピタキシャル成長させ、さらにさまざまな電極をコンビナトリアル的に堆積させて一挙に最適化を図りました。その電流ー電圧特性の詳細な解析から、電界誘起抵抗変化メカニズムを明らかにしてきました。現在、ナノテク技術を駆使して素子の微細化に伴う課題の克服に務めています。:




(3)ULSI用高誘電率ゲート絶縁膜の角度分解光電子分光解析
Angle-resolved photoelectron spectroscopy of ultrathin SiON films and high-k gate insulator films for ULSI

3年で4倍の集積度向上を示すULSIの課題の一つは、LSIの心臓部であるゲート絶縁膜の極薄化に伴うリーク電流やキャリヤ移動度低減を極力抑制した高信頼ゲート絶縁膜の開発です。我々は、STARC共同研究の一環として、高分解能で絶縁膜/Si界面の化学状態や電子構造を解析出来る放射光利用角度分解光電子分光を用いて、極薄Si酸窒化膜や高誘電率薄膜解析を行っています。NO-RTN 法形成酸窒化膜、 plasma-CVD形成酸窒化膜、およびアンモニア処理酸窒化膜の3種類については、窒素原子の分布、第2近接効果の解明、バンドオフセットを明らかにしてきました。また、ZrO2膜、HfO2膜などの高誘電率薄膜については、界面にバンドギャップが大きなシリケート層が形成されており、その上にhigh-k膜が存在することを示し、2層の価電子帯不連続性、伝導帯不連続性を0.1eVの精度で決定することに成功しました。また、熱処理による界面化学反応の様子、バンドオフセットの変化を明らかにしています。今後は実デバイス構造(電極付き)のバンドオフセット、界面蓄積直電荷量の非接触定量化などを行っていきます。:2009年度ICESSベストポスター賞、200・W年度応用物理学会講演奨励賞、2007年度独創を拓く先端技術大賞優秀賞、2007年表面科学会放射光表面科学部会シンポジウム最優秀ポスター賞,2007年度第20回放射光学会年会合同シンポジウム学生会員発表賞、2006年春季応用物理学会講演奨励賞、2006年度第19回放射光学会年会合同シンポジウム学生会員発表賞、2006年度応用化学科卒業論文優秀賞、2006年度STARCシンポジウム最優秀ポスター、2005年修士論文最優秀賞(藤嶋賞)、卒論最優秀賞(藤嶋賞)、2004年STARC共同研究最優秀賞,



(4)酸化物単結晶基板上への窒化物半導体ヘテロエピタキシャル成長:低消費電力LED表示素子応用
Epitaxial growth of semiconductors on single crystalline oxide substrates

酸化物単結晶は強磁性、強誘電性、非線形光学特性、超伝導といったユニークな物性 を示すため、従来の半導体素子に無い新しい機能を実現するとして大きな注目を集めています。我々は単結晶酸化物基板上に化合物半導体(GaN, AlN, InN)を原子オーダーで制御して成長させることができれば、半導体の高速信号処理機能、発光素子機能と酸化物の新機能性を利用した新しい複合機能デバイスが実現できるのではと考え研究を進めています。これまでに、成長条件や基板前処理を工夫することにより、MnZnフェライト, MnO, YSZ, ZnO, SrTiO3, LiGaO2, LiNbO3等の単結晶酸化物基板上ヘの化合物半導体のMBEへテロエピタキシャル成長に成功しています。今後は結晶成長条件の最適化を行い、発光デバイスへの応用を模索していきます。:2010年度卒論優秀賞、2010年度電子材料シンポジウムEMS賞、2008年度応用物理学会講演奨励賞、2005年度東京大学フェローシップ、2003年日本工業新聞先端技術大賞優秀賞(フジテレビジョン賞)、2002年日本表面科学会スチューデント奨励賞,2002年日本材料科学学会(MRSJ)若手奨励賞




【2】固体高分子型燃料電池用正極触媒の開発

Development of non-precious metal cathode catalysts for PEFC

白金などの貴金属、希少金属を使わない新しい正極触媒として注目されている”カーボンアロイ触媒”の開発および放射光を用いた電子状態解析を行っています。これまでにカーボンナノシェル(直径数10 nm)のグラフェンシート中に添加された1%程度の窒素が大きく触媒活性を支配していること、また窒素原子がzig-zagエッジの3配位位置に置換した構造が高い活性を示すことを見出しています。放射光を用いた光電子分光、X線吸収分光、EXAFS、in situ軟X線発光分光により、活性化メカニズムをさらに詳細に明らかにし、白金を凌駕する新しい正極触媒を開発していきます。:、2011年度放射光学会学生発表賞、2010年度放射光学会学生発表賞、2008年度表面科学会放射光表面科学部会シンポジウム優秀ポスター賞




【3】蓄電デバイス(Liイオン電池など)用正極触媒の開発

Development of cathode catalysts for rechargeable batteries

低炭素化社会実現に向けた自然エネルギーの利用が進められていますが、それには二次電池のパワー密度向上(強い)、エネルギー密度向上(長持ち)が不可欠です。現在、レアメタルであるCoを使わない新しい正極材料の開発を行っている化シス山田研究室と共同でリチウム添加リン酸鉄の放射光利用解析を進めています。共鳴光電子分光によってFe 3d電子のみの電子状態を解析することが出来、Li脱挿入に伴う格子定数の変化、電子状態の変化を解析し、第一原理計算と対応付けています。




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